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畏れて愛す③

 投稿者:Skydancer  投稿日:2010年 3月13日(土)16時22分5秒
返信・引用
  ダスカロス、ルーシヤの弓隊は反王軍の重装備の歩兵に
押さえ込まれていて動きが取れなかった。
ネクスト率いる主軍がラグドール目がけて怒涛の勢いで
突っ込んできている。ラグドールは冷静に精神を集中させているようだ。
閉じていた眼を開いた。両腕を振り翳す。
夥しい数のスケルトンファイターが沸いて出た。
ラグドールはネクストに向かって指をかざした。
モンスターの群れが地鳴りのような呻き声をあげて
斧を振り回しながらまばらに走り出す。
「なんて数だ、本当に一人でこれだけの数を
 召還してやがるのか?」
緋酉を降伏させ勢いに乗った反王軍の足を見事に
食い止めている。
「ここで梃子摺るわけにはいかぬ!
 兵力で押さえ込め!」
反王の精鋭部隊にラグドール一人。
さすがにサモンモンスターの数もみるみる減っていく。
ネクストの目の前。モンスターが散った。ラグドールまで
一気に突っ込める隙が見えた。
迷わず果敢に攻め込んだ。目の前。ラグドールの顔まで
はっきりと見えた。剣を振り翳す。空気を裂く音。
ネクストは音の方向に盾を向けた。矢が盾を突き破った。
慌てて数歩下がる。女ELFが矢を引き絞りながらこちらに向かってくる。
弓隊は押さえていたはずだ。そう思っていたがダスカロスが剣を持って
素早く回りこみ重装備の部隊を撹乱している。
「反王軍ってのは大勢で一人を狙うのか?
 小賢しい、愚昧な輩よな。」
「貴様何者だ?」
「ルーシヤってもんだ。お前はネクストといったかな?
 緋酉となんの取引をした?畜生にも劣る無様な戦い方よな。」
「何とでも言うがいい。今はいち早くここを突破せねばならぬのだ。」
「残念だが緋酉が寝返った以上、ここは長くは持つまい。
 だがすんなり通れるとも思わぬことだ。」
そうしてる間にラグドールがサモンモンスターを次々と召還している。
辺り一面躯の戦士で埋め尽くされつつある。
一刻を争うのだ。ここで時間を割く訳にはいかなかった。
ネクストはありったけの兵をルーシヤに向かわせた。
撹乱に手間取っているダスカロスに向かってネクストは
単身突撃した。重装備の兵がダスカロスを囲む。
ダスカロスは必死に掻い潜り剣を振り下ろしていた。
ネクストは隙が見えるのを待った。呼吸にして4度。
包囲が解けてダスカロスの隙が見えた。気配を消し一気に詰め寄る。
ネクストは剣を振り下ろした。ダスカロスも気配を察知して身をかわす。
ダスカロスが跪いた。暫くして剣を掴んでいる腕が落ちてきた。
「油断した。お前がネクストか。」
ネクストは何も言わずダスカロスの背後に回り腕を掴んだ。
そのまま首に腕を回し、動きを封じた。
「貴様には盾になってもらう。ルーシヤとやらが面倒なのでな。」
それに気が付いたルーシヤがネクストに向かって矢を引き絞っている。
「ネクスト。俺に人質の価値はない。俺を盾にしてると後悔するぜ?」
そういってダスカロスは歯で肩紐を引きちぎった。
鎧がずり落ちる。ダスカロスがルーシヤに目線を送り、
お互い静かに頷いた。
「馬鹿な、死ぬ気か?」
「お前には馬鹿に見えるか?
 戦場に立った時点で死は覚悟している。」
そういってダスカロスはネクストの腕に噛み付いた。
ルーシヤが矢を放つ。ネクストは腕を振り解けなかった。
上体だけをなんとかかわした。矢はダスカロスの首とネクストの腕を
貫いている。
喉をやられネクストの腕の肉を喰いちぎってダスカロスが
地面に倒れこんだ。声にならない声で何か言っている。
「俺の命とお前の腕1本か・・・損な役回りだ・・・」
そう言ってダスカロスはネクストを睨み付けている。
呼吸が上手く出来ないようでその先の言葉は聞き取れなかった。
ネクストはダスカロスの顎を掴んで、
勢いを付けて引き上げた。首の骨の折れる鈍い音が聞こえた。
 
 

畏れて愛す②

 投稿者:Skydancer  投稿日:2010年 1月14日(木)17時38分13秒
返信・引用
  ネクストに緋酉の母親の確保に部隊が動いたとの知らせが入った。
「一か八かだ!」
そのまま背後の部隊に攻め掛かった。緋酉が見えた。迷わずそこに単身突撃した。
ネクストが剣を振り翳す。緋酉は難なく受け止め左手に魔力を集中させていた。
「緋酉!我が軍門に降れ!」
「戯言は地獄で鬼どもに語ってろ。」
「お前の母親は元気か?」
その言葉を聞いて緋酉の手が止まった。
「緋酉、お前の反応次第で母親の命運が決まるとしたらどうする?」
「貴様、そんな事までして騎士として恥ずかしくないのか?」
明らかに緋酉から戦意が消えたのを感じた。
「緋酉。お前はカオティックだな。
 何をどう足掻いてもお前は殺戮者だ。
 我が軍のDEの拷問の一件も聞いている。」
緋酉はネクストを睨みつけ黙って聞いている。
ネクストは続けた。
「お前は護りの男ではない。攻めにこそ力を発揮する。
 血が見たいのだろう?お前は殺す事でしか
 自分の存在を確認出来ぬ男だ。我が軍に降れ。
 思うままに戦えるぞ。」
緋酉は視線を地に落とし何も言わなかった。
「敵の臓腑を抉り出し死に直面した時にしか
 お前は自分の生を確認できないんだよ。
 お前は殺戮者だ。殺せるか殺せないか。
 それがお前の全てだ。お前は殺戮者だ。」
剣を受け止めている緋酉の耳元で執拗にネクストは囁いた。
緋酉がネクストの剣を弾き返した。
「黙れ!」
ネクストは剣を鞘に収めた。一度大きく息を吐いて
緋酉に目線を合わせた。
「お前の対応で母親が楽に暮らせ、幸せになるか
 ただの肉塊になるか・・・
 お前が選べばいい。今まで好き勝手に流浪してきたな。
 そろそろ母親に楽をさせてもいいのではないのか?」
「畜生にも劣る愚者め。」
「その愚者にお前は攻撃出来ないでいる。
 答えは出たと見ていいな。」
ひざまづいた緋酉を横目にネクストは伝令を走らせた。
「全軍!このWIZは軍門に下った!手を出すな。
 あそこのサモナーに集中攻撃!重装備の部隊はELF隊を牽制しろ!」
反王軍がラグドールに向かって総攻撃を開始した。


伝令が駆け込んできた。
「緋酉将軍が造反!防衛部隊が囲まれています!」
トワークはその伝令を聞いて唖然とした。
「造反だと!緋酉が裏切ったのか?」
「敵の将軍と一騎打ちした後、何か言葉を交わして
 敵軍に消えたとの事です。」
亞圖夢は現状が理解できず狼狽していた。
おしげが亞圖夢を寝室に連れていき戻ってきた。
「トワーク殿、WWに向かった部隊に帰還命令を出さねば
 間に合いませぬぞ?」
おしげの言葉もトワークの耳には入らなかった。
考えに考え抜いたはずだ。自軍から裏切りが出るなど
とは想定していなかった。そこまで考えると策など
到底成立しない。自軍に裏切りを呼ぶ隙があったのか。
たしかに何かが引っかかっていた。
攻めの性格の緋酉を防衛に回したからなのか。
しかし他の武将達は守りに強い者達だった。一人くらいは
攻めに強い武将が必要だった。それは緋酉も理解していたはずだ。
「トワーク殿!」
初めて聞いたおしげの強い口調で意識が現状に向いた。
「そうだな。間に合わぬかも知れぬが帰還の伝令を。」
ネクスト。一体何をしたのだ。
トワークの頭の中には最悪のシナリオしか浮かんでこなかった。
 

畏れて愛す①

 投稿者:Skydancer  投稿日:2010年 1月 5日(火)11時04分36秒
返信・引用
  「反王軍に動きが出ました。
 大きく迂回するようです!」
伝令が駆け込んできた。トワークは煙草を咥えたまま
何も言わずに頷いた。
「やはりそう読んだか、ネクスト。」
呟き、伝令を呼んだ。
「ヴィルゲインの部隊には早急にWWに向かえと伝えろ。
 もう出てるやも知れぬがな。防衛部隊には敵の背後に
 回れ。城門の守備の部隊には意地でも守り通せと
 伝えろ。Koaもそちらに回す。総員ぬかるな。」
内容を復唱して伝令が走り去った。
「トワーク殿、勝てるのですか?」
亞圖夢が不安げに聞いてきた。
「姫、上手くいきます。敵はこちらの罠に
 足を踏み入れております。」
おしげはそう言って立ち上がった。
「岩塩改、お前も城門の守備に回るのだ。
 城壁から敵の部隊長を狙え。お前なら容易いはずだ。」
何も言わずに岩塩改は頭を下げ駆け去った。
暫くして伝令の兵が戻ってきた。
「反王攻撃部隊はすでに進軍中、現在砂漠に入ったと思われます。」
ケント城でどれだけ足止め出来るか。
トワークはまた地図に眼を落とした。


ネクストは兵に余計な物は全て捨てさせ迅速に進軍させた。
この進軍速度なら挟撃にあう前に城門に貼り付ける。
あとは兵力差で何とでもなるはずだ。
伝令が入った。防衛線の部隊は慌ててこちらを追ってるようだ。
城門にいくらか部隊が補充されているとの事だった。
ただ大玉達の部隊の情報が入ってこない。
伝令が遅れているだけだろう。城門が視界に入った。
さすがに雨のような矢が降り注いでくる。
だがまだ距離がある。矢は力無く地面に落ちていた。
なのに自軍から被害が出ているとの報告があった。
「被害だと?何を言っている。攻撃すら届いていないのだぞ?」
苛立ちながらネクストは確認を取らせた。空気のうねり。
咄嗟にネクストは振り返った。目の前。矢が見えた。
慌てて盾で弾き返した。この距離でこの矢速。在り得なかった。
矢の軌道を眼で追った。大きな岩の上に立っている女エルフが
不敵な笑みを浮かべている。
「あれがかおりぃんか・・・」
かおりぃんが右手を真っ直ぐ伸ばし、手の平を上にした。
そのままゆっくり指を数回曲げた。
「おのれ、私を愚弄するか!重装備の歩兵に盾を持たせ
 突っ込ませろ!武器はいらぬ!城門まで道を作らせろ!
 残りは後ろから来る追撃部隊を牽制だ。」
突っ込ませた歩兵が一人、二人と倒れている。
城壁からエルフが一人盾をかわして的確に脳天を狙っている。
「さすがだ。やるではないか。」
ネクストも盾を持った部隊の後方に付いて進み出した。
「伝令!遊軍と思われる部隊が砂漠方面に消えました!」
ネクストは耳を疑った。砂漠方面だと?
「消えたとはどういうことだ!」
「わかりません、なにしろ足を踏み入れては帰ってこれる
 場所でも無いので追えませんでした。」
ネクストは地図を頭に思い浮かべた。意味がわからない。
砂漠に入ってどうする気なのだ。方向を見失い果てるだけではないのか。
砂漠の先にあるもの。WW城。だが行ける訳が無い。
いける術を持ってるのか。Chivalryの血盟員。ぱやが昔砂漠の民だった。
もしぱやがその術を知っていて、誰かに伝えていたら。
そこまで考えてネクストは背中に悪寒を感じた。
「なんと言う男だ!」
そう吐き捨てて立ち止まった。近くにいた指揮官を捕まえた。
「遊軍は消えたのではない!WW城に向かっている。」
「何を馬鹿な。砂漠をどうやって越えるのだ?」
もはや猶予はなかった。説明してる時間が途轍もなく長く感じる。
さすがに指揮官も顔色が変わった。
「本当に砂漠を越える術なぞあるのか?」
「ある!無いと言う我々の先入観までトワークと言う男は
 利用したのだ!ケレニスがいるにしてもあちらには大玉がいる。
 残るのは反王と老兵ばかりだぞ!」
背後に迫った追撃部隊。これをどうにかしなければとても間に合わない。
「おのれトワーク!知略ではお主に敵わぬのか!
 全軍反転せよ!追撃部隊を攻撃する!城門は捨てて置け!
 あとウッドベックにいる緋酉の母親の身柄を捉えろと伝令を出せ!」
「なぜだ?」
「緋酉という男はよく知っている、あやつの弱みは母親だけだ。
 もう形振りかまっておれぬ!利用する!」
間に合うのか。普通に戦っていては間に合わない。
罪悪感はあった。これも戦争だ。
ネクストはそう思い。罪悪感を押し殺した。





見渡す限りの砂地。いくらかの起伏はあるが
今何処を歩いているのか大玉にはもうわからなかった。
足跡さえ風によってすぐにかき消される。
多少モンスターが現れるがヴィルゲインが手際よく片付けている。
「赤狼王とやら、私には皆目検討が付かぬが
 この方向で合っているのだな?」
鼻と口を覆ったスカーフをずらして赤狼王が答える。
「ご心配なく。」
Bibianが喉の渇きを訴えた。赤狼王が腕を上げる。
少し休めそうだ。大玉は皮袋を取り出し水を頬張った。
「もう少しでオアシスがあります。そこで補給して一気に進みます。」
「やれやれ、とんだ貧乏くじを引いたな。ここまで暑いとはな。」
大玉は着ている上着を脱ごうとした。エンプーサが腕を掴んだ。
「暑いならまだいいのです。上着は着ててください。
 皮膚が焼かれますので。」
そう言って歩いているうちに水辺が見えた。
食料と水、ポーションを買い揃えて再度進んだ。
皆地形を見て歩いているが赤狼王は空を見ながら方角を
選んでいた。理由は分からなかったが砂漠にある城の城壁を
捉えた。警戒してる気配は無い。
「反王は城の中だろ?城門を突破しないとだな。」
「所詮老兵どもだろう?私に任せろ。」
そう言って大玉は一人無防備で進んで行った。
正門前に躊躇も無く進む。護衛の兵に止められたが
次の瞬間護衛の兵の体が砕け散った。辺りに肉片が飛び散る。
残った護衛兵が震えて立ち尽くしている。
大玉はそのまま城門まで行くと門に手を翳した。
重たい城門が砕け散った。城の内部から喚声が聞こえる。
「ここからが勝負だな。ケレニスは私が殺す。手を出すなよ?」
難なく城門内部に侵入できた。城の方から禍々しい気配を感じる。
「久しぶりね、大玉。」
ケレニスがゆっくりとこちらに向かって歩いてくる。
「私にもう枷は無い。お前を殺しに来た。」
大玉から尋常では無い殺気が放たれていた。
「言うだけなら容易いわね。」
そう言ってケレニスが魔法を唱える。ファイアーボール。
範囲魔法だ。皆が身構えた。
雄叫び。大玉が素手でその火の玉を叩き伏せる。
「多少は腕を上げたようね。」
大玉は何も言わずケレニスに歩み寄った。
「無防備で突き進むとは・・・頭の方は成長して無いのかしら?」
ケレニスが魔力を集中させる。まさかメテオか。
「皆!下がれ。隕石が落ちてくる。城門まで下がるのだ。」
そう言って大玉はその場で低く構えた。Bibian達は城門まで
慌てて引き下がった。
ケレニスが魔力を解き放つ。天空が紅に染まった。
数え切れないほどの巨大な火の玉が降り注いできた。
大玉は魔法を唱えた。ヘイストにホーリーウォーク。
そのまま凄まじい勢いで突き進んだ。火の玉を巧みにかわしながら
ケレニスの目前まで突進する。
「成長して無いのは貴様だ!」
そう言って拳を叩きつける。ケレニスの体が吹き飛んだ。
「ケレニス。応援が必要か?」
反王だった。ケレニスは大玉を睨みつけたまま何も言わない。
「成長したではないか大玉。だが貴様の息子に何も細工しないで
 引き渡したと思うのか?」
「何が言いたいのだ。」
「面白い物を見せてやろう。」
そう言って反王は魔法を唱えた。ケレニスの後方に光が見えた。
「馬鹿な!」
其処には大玉の息子の姿があった。コールクラン。
「お前が魔法を放ってもケレニスがかわせば、
 言うまでも無いな。」
反王が呟く。
ケレニスが笑みを浮かべた。
「動くなよ?大玉。」
イラプション。大玉は微動だにせずまともに食らった。
「そう・・お前はそういう女ね。」
大玉が膝を付いた。
「まともに戦いもせぬのか、腐った奴らだ。」
「敗者の弁は負け犬の遠吠え。勝てばいいのだ。」
そう言ってケレニスから無数の魔法が放たれた。
その全てを大玉はまともに食らった。
辺りを土煙が覆う。膝を付いた大玉が見えた。
「お前だけは必ず殺す。そう言った筈だ。」
そう言って大玉は力いっぱい地面を殴りつけた。
再度土煙が覆う。風に流され視界が開ける。
其処に大玉の姿は無かった。
「地中か。」
呟きケレニスが歩み寄る。
地面に僅かに血が染み出ている。
「浅はかね、大玉。」
そう言って地面に杖を突き立てた。手応えがあった。
ふと背後に気配を感じた。首を掴まれた。
「杖に刺さってる物は私では無かったな。ケレニス。」
杖を引き抜いた。腕が刺さっている。
「私も長くはなさそうだ。決着は地獄で付けようではないか。」
「ま・まて、大玉・・・」
「もう、待つのには飽きたんだよ。」
大玉は指に渾身の力を込めた。ケレニスの首に指が食い込む。
「先に行ってろ。」
ケレニスの首が胴から離れた。大玉が崩れ落ちる。
ヴィルゲイン達が慌てて駆けつける。
「Bibian!腕を繋げろ!急げ!」
皆が駆け寄り処置を施す。反王がそれを尻目に抱えていた子供を投げ捨てた。
子供が泣き崩れながら大玉に駆け寄り、しがみ付いた。
「お前は我息子。乱世を恨むな、時勢を恨むな。
 強くなれ。さすが大玉の息子と言われる漢になるのだぞ。」
残っている腕で子供を抱え、横たわりながらそう囁いた。
「Bibian、もうよせ。無駄だ。血を流し過ぎてる。
 残るは反王だけだ。お前達だけで首を獲るのだ。出来るな?」
そう言っている大玉の口からは血が止め処なく流れていた。
「Skydancerか・・・あやつの口車に乗って戦場で果てるか。
 それもよかろう。息子を頼む。」
そう言ってビビアンの腕を握っていた。
やがて掴んでいた手が力なく地面に落ちた。
 

軍師の境遇④

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年11月30日(月)12時27分18秒
返信・引用
  一夜明けてトワークは居室から外に出た。
なにやら騒がしい気配が嫌でも伝わってくる。
目の前を忙しそうに小走りしている岩塩改を見かけた。
「おい、何の騒ぎだ?反王の軍はまだ体制が整わぬ筈だ。
 反乱でも起きたのか?」
「いえ、ヴィルゲイン殿とBibian殿の挙式があるのですよ。」
「挙式だと?」
「なにやら急遽決まったようで、こちらも対応に四苦八苦してるところです。」
岩塩改は頭を掻きながら笑みを浮かべている。
「なにがおかしいのだ?大体なぜ今なのだ?」
「挙式ですよ?めでたい事じゃないですか。
 こんな時勢ですから少し位めでたい事があってもいいのでは?」
そう言って小走りにまた駆け去っていった。
仕方なくトワークは集会場に足を向けた。
忙しそうに指示を出しているKoaを見つけた。
「この挙式とやらで使う食料、行軍3日分と言ったところか?」
トワークの言葉を耳にしてKoaが振り返った。
「挙式ですよ?行軍なんて言葉は控えてください。
 もう、無粋もいいところですよ。」
「しかしだな、Koa。」
「トワークさん、邪魔です。飾り付けが出来ないじゃないですか。」
集会場から追い出されトワークは自分の部屋に戻った。


式が始まった。俺はいいと言ったのだが
Koaに強引に部屋から引きずり出された。
もう飲んでさっさと寝てしまおうと思った。
隣に座っているのがおしげだった。遠目に新郎新婦を見つめて
笑みを浮かべている。
「お主にそんな感情もあるのだな。」
「これでも人間です。めでたい事には笑みも出ますでな、トワーク殿。」
「いくらめでたい席でも両軍の軍師が並んで座ったんじゃ
 無粋な話にしかならねぇぜ?」
おしげは酒を飲み干し大声で笑いはじめた。
「トワーク殿、策は煮詰める段階。今宵くらい忘れてもいいのではないかね?」
「俺は軍師だ、戦いの事を頭から外せというのが無理な話だな。」
おしげが杯を手に立ち上がった。髭にかなり白いものが目立つ。
「トワーク殿、損な性格ですな。滅私奉公とでもいうのか、
 いや、奉公の相手がいませぬな。なぜに御自分を
 追い詰めなさるのかね?」
返事はいらぬというようにおしげが手を振って席を後にした。
新郎新婦が外に出たようだ。
皆つられて外に出る。ヴィルゲインが猪を捕まえてあったようだ。
Bibianが炎の魔法で毛を焼き払い焚き火の上に吊るした。
猪の肛門を切り裂き内臓を引きずり出す。そこに野菜や米を
葉で包んだ物などめいっぱい詰め込んだ。
焼けてきた肉をヴィルゲインがダガーで切り取り小皿に取り分ける。
Bibianは少し離れたところから遠目に微笑を浮かべながら
その光景を眺めている。見渡せる小高い丘の上に腰を下ろして
トワークは一人酒を飲んでいた。背後に気配を感じた。
「なんでこんなところで御一人でお酒を召しているのです?」
「Koaか。」
「今日、せめて今くらいは戦いから頭を離してくださいよ。」
「だからこうして飲んでいるではないか。」
Koaがため息をついて横に座った。トワークはKoaの持っている
杯に眼を移した。茶のようだ。
「でも、無意識なんですか?剣の柄を握ってますよ?」
言われてトワークは剣の柄から手を離した。気配を感じると
無意識に武器に手が伸びる。そんな自分と今のこの雰囲気を較べて
トワークは自分が滑稽に思えて苦笑した。
「じゃぁ、戻るか。ルーシヤとケントの若いエルフ、名はなんといったかな、
 ダスカロスだったか。酔い潰れて地べたに大の字になっている。」
腰を上げたトワークにKoaがついてくる。
「トワークさん、何か策を練っておられるのでしょう?」
「今はそんな無粋な話しは無しじゃなかったのか?」
「そうでしたね、ごめんなさい。」
そのまま何も言わず、歩いた。Koaは俯いたままだった。
みなのいる場所まで来た。Koaが手際よく酔い潰れた者を
介抱している。トワークは新郎達の所まで歩いた。
「おめでとう。皆にとっても良い息抜きになったようだ。」
「これは軍師殿、このような状況で式などとご迷惑だとは
 思ってましたがありがたい。」
Bibianは横で深々と頭を下げている。
「いや、気にするな。俺も久々に楽しんだ。」
そう言って振り返った。Koaが倒れているのが見えた。
皆気が付いたのか、傍に駆け寄った。
「おい、どうした?大丈夫か?
 誰か、何があったのだ?」
警備の兵が駆け寄ってきた。おしげが事情を聞いている。
「なんとも喉が渇いたとかで手元にあった杯を飲み干して
 いきなり倒れたそうじゃな。」
トワークは傍に転がっている杯を手に取った。
「誰か大玉をここに連れてこい、大至急だ。」
「軍師殿?」
「全軍、第1種戦闘配置だ。わかるな?」
大玉がこればなんとでもなる。余興にはなるか。
そう思っていたが酒が強すぎたのか、Koaはそのまま朝まで
目覚めなかった。OTからかおりぃんと野獣王、オークの近衛兵が到着してるとの
報告があった。総力でこの罠に反王軍を引き摺りこむ。
トワークは地図に眼を落とした。考えに考え抜いた。
勝てるはずだ。兵の配置を再度見直した。
ギラン手前の防衛線。ここが要だった。
「軍師殿、会議の時間です。」
トワークは返事もせず、立ち上がった。





会議室に向かった。
久々に全員揃っただけあって、顔ぶれは壮観だった。
「布陣は配った便箋に書いてあるとおりだ。
 お前達は軍人だ、自分の役目を把握し、なぜとか
 なんでとか考えるな。与えられた任務を黙って
 遂行するのが軍人だ。わかるな?」
野獣王や緋酉あたりが怪訝な表情で黙って聞いていた。
「トワーク殿、私を含めて数名配置図に名前の無い者が
 いるのですが?」
「名前の無い者は残れ、あとギラン手前の防衛ライン担当者も残れ。
 以上だ。」
一方的な雰囲気で会議は解散した。
言われた数名だけがその場に残った。誰しも不安げな表情をしている。
トワークはその間一言も発せずに煙草を吸っていた。
トワークが腰を上げた。窓の外を見て振り返った。
「まずはギランの防衛線、いいか、絶対にこちらから攻めるな。
 例え有利な展開になろうともだ。守り通せばいい。
 敵軍がもし退却を始めたら殺し尽くす勢いで追撃しろ。
 緋酉、ダスカロス、ルーシヤ、ラグドール。いいな、守るのだ。」
4人とも頷いて倉庫に向かった。便箋に名前の無い者が残った。
机の上に地図を置いてトワークが指でなぞった。
「さて、お前達には特殊な任務に付いてもらう。」
地図から眼を離さずに喋っている。
残ったのはヴィルゲイン、Bibian、赤狼王、エンプーサ、大玉の5人だった。
「お前達の持ち場はここだ。」
そう言ってトワークは地図の一点を指差した。
場所としてはケント城の東北、防衛ラインの援護部隊にも見えるが
位置が妥当だとはヴィルゲインにはどうしても思えなかった。
「軍師殿、一つだけ質問させてくれないか?」
「なんだ?ヴィルゲイン。」
「我々は遊軍としてここに待機するのですか?
 それならばもっと西に構えるべきです。援護に回るにも
 距離が若干遠いように思えるのですが。」
「若干だろ?なんとでもなる距離だ。」
「しかし軍師殿・・・」
何か言いかけたヴィルゲインにBibianが肩に手を置いて首を振っている。
「説明が必要か?」
トワークが辺りを見回した。大玉が口を開く。
「この前のDEの拷問、あれが関係してるのだな?」
トワークは煙草の煙を天井に向かってゆっくり吐き出し、また
目線を地図に落とした。
「反王が今ここにいるのだ。」
そう言ってWW城を指差した。そこからケントまでなぞる。
「馬鹿な!砂漠を越えるのか?無理だ。あの広大な砂漠に足を
 踏み入れたら最後、方角を見失いバシリスクに襲われるのが
 関の山だ!」
「ヴィルゲイン、ぱやを覚えてるか?
 あやつは昔砂漠で暮らしていた。砂漠を移動する術も持っていた。
 赤狼王といったな、昔こちら側の血盟にいた。ぱやとも
 付き合いは長かった。そしてその術を知っている。
 赤狼王がいれば砂漠は越えられる。」
皆が赤狼王を見た。何も言わずに小さく赤狼王は頷いた。
「では我々は反王の首を直接狙うのですか?」
「そうだ、ヴィルゲイン。敵の主力は今ギランに終結している。
 WW城を守ってるのはケレニスと老兵ばかりだ。
 我らに残された道はこれしかない。ここで反王の首を取れば
 形勢は一気に逆転できる。」
まさに乾坤一擲の策だった。これしかないのだろう。
しかしあの劣勢の戦いの中トワークはこれだけの策を考えていたのか。
今味方で居る事に安堵さえ感じた。
「ギランの防衛線に敵の主力部隊がぶつかって20分後だ。
 20分経過したらお前達は赤狼王の指揮の元迅速にWW城に向かえ。
 例えネクストが気が付いたとしても撤退は出来ぬ、
 守りに徹した陣は追撃に最も適しているからな。」
全員納得したようだった。もはやこれしかないのだろう。
「ところでヴィルゲイン。一つ聞きたいのだが。」
「なんでしょうか?」
「お前達はその、なんでいきなり結婚なのだ?」
質問の仕方がおかしい事に気が付いてトワークは顔を背けた。
「なんでと言われましても。」
ヴィルゲインも答えに困っているようだ。
「大事な事は意外と簡単に決まってしまう物です。
 結婚にしても戦争にしてもそうでしょう?
 理屈じゃないんですよ。そんなものです。」
そう言ってBibianはヴィルゲインの手を握っていた。
「そうかもしれぬな。先ほど若干の距離と言ったな?
 その若干がネクストの眼を狂わせるはずだ。
 あいつには決断出来ないはずだ。気が付いたとしても
 打つ術はないだろう。」
「解りました。我らでこの戦争に終止符を打って見せます。」
トワークは煙草をもみ消した。残り香が部屋に漂う。
「大玉、相手は反王だ。ケレニスもいるだろう
 どんな手を使って抵抗するやも解らぬ、気を付けることだ。」
大玉はケレニスの名が出た時からただならぬ殺気を発していた。
「殺せばいいのだろう?殺し方には口をだすなよ?お前達。」
「それはお前に任せる。各員流れは分かったな?
 ここが正念場だ。この戦いで我らの命運が決まる。
 ぬかるなよ?」
そう言ってトワークは地図から眼を離した。
遣り残した事があるのか。無いはずだ。
何かが引っかかる。些細な事のはずだ。
「行け。」
迷いを断ち切るようにトワークは言い放った。



ギラン城の中でネクストは地図を見ていた。
伝令が報告しに来た。敵の配置を地図に付けたしていく。
主力はギラン手前の防衛線にケント城城門。
ケント城の城門の守備のかおりぃんと野獣王。
この二人は強敵だった。攻めるには体制を立て直す必要がある。
ただ一つ気になったのがケント東北の部隊だった。
位置的にはギラン防衛ラインの援護にも見える。
だがその位置が微妙だった。
トワークと言う男は知っている。あの男が指揮した
配陣だとはとても思えない。位置がしっくりこない。
しかもそこに大玉を配置していた。
攻めるにも守るにも大玉は重要な戦力のはずだった。
何かある。歴戦の勘が訴えている。
だがネクストには答えは見えなかった。
何を考えているのだ、トワーク。
考えたがやはり答えは見えない。
「敵の防衛線を攻める。各自準備はいいな?」
そう言って、部屋を後にした。

ギラン郊外の敵陣が見えた。
ネクストは右手を上げ陣を整えさせた。
守りに付いてる武将、緋酉以外は余り情報が無い。
Elfの二人に関してはまったく情報が無かった。
若いWIZは大玉の弟子だと言う情報しかなかった。
「崩せそうなのは若いWIZと男のElfの部隊か。」
ネクストはDEの一隊を牽制に攻めさせた。
暫くして報告が入った。あっという間に殲滅されたと言うのだ。
ネクストは前線に立ち敵の陣容を確かめた。
若いWIZ。そして無数のサモンモンスター。
まさかあの若造一人で召還したのか。
だが、優勢にもかかわらず一向に攻めてこない。
先手は向こうに取られた。勢いに乗ってもおかしくないはずだ。
だが守りの陣を崩す気配はまったく無かった。
このままでは無駄に戦いが長引く。他に攻める道は無いのか。
そう考えて一つの道が浮かび上がった。
防衛ラインを迂回してケント城を直接攻撃する。
遊撃部隊の位置も僅かに離れている。上手くいけば
遊撃部隊の先手を取れそうな配陣だ。
「あやつの狙いはこれか・・・」
防衛ラインを迂回させ城を攻めさせる。その為の
僅かな隙を作り挟撃の形を作る気か。
「トワーク。底が見えたな。」
そう呟いてネクストは全軍に伝令を飛ばした。
「各部隊は迂回してケント城を攻めよ!
 こちらは大軍だ!犠牲は厭わぬ!城さえ落とせば
 我らの勝利だ。」
反王軍が一斉に動き出した。
 

軍師の境遇③

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年11月 7日(土)21時04分31秒
返信・引用
  引きこんだ敵の陣は崩した。壊走を始めている。
敵の右翼の陣も大玉とラグドールが見事に押さえ込んでいた。
伝令が血相を変えて走ってきた。
「Mfedor殿討ち死!Restem殿が重体!」
「おい、ウィルゲインはどうした?ホークは戻ってきているが?」
伝令の兵は狼狽している。
「見当たりません。敵陣深く食い込んで行ったとの報告はありますが
 未確認ですのでなんとも。」
「どいつもこいつも・・・」
舌打ちしてトワークは椅子に座り込んだ。
「それでRestemの容態は?」
衛生兵が報告しに来た。
「意識が戻りません。最善を尽くしてますが
 戦場復帰は諦めていただきたい。」
少し考えるそぶりをしてトワークは口を開いた。
「全軍ケントまで引く。殿(しんがり)は新参のBibianに任せる。」
「ギランまで落ちれば勝ち目はないのであろう?」
「緋酉、いいから軍を引くのだ。」
ホークがそれを聞いて装備を再度整えだした。
変身スクロールを手にしたのが見えた。
「ホーク、撤退だ。それはいらん、使ってはならんものだ。」
「ゲインを連れ戻る。ケントで待ってろ。」
何か言おうとしたトワークを睨みつけ、ホークは陣を後にした。

ギラン軍撤退。報告をうけてケントから援軍が来たようだった。
「ケントに付くまで護衛します。」
女ELFだった。かなりの使い手だと一目で解った。
「お前、名前は?」
「ルーシヤと申します。ケント軍の遊軍を任されています。」
「攻撃は不得手だと?お前達の軍師のおしげとやらは
 かなりの曲者だな。」
ルーシヤは頭を傾げている。Bibianが到着したとの報告が入った。
「Bibian。敵の追撃を押し返せ。向こうも壊走してるので
 厳しい追撃はないだろうがお前の腕を見せてもらう。」
杖を肩に担いで自信たっぷりの表情で頷いている。
「あのまま乱世から姿を消す気か・・・」
呟いたトワークにBibianが首を傾げた。


今自分が何をしてるのか解らなくなっていた。
Mfedorが殺された。RestemもMfedorの斧を手に
攻めたがあっさり返り討ちになった。足を片方切り落とされた
のは見えた。自分はダークエルフ。
切り落とされた足を繋ぐ術はもってない。
Restemのうわ言のように聞こえた声だけが脳裏に焼き付いていた。
Mfedorを護れなかった。それだけを繰り返し発して意識を失った。
撤退している反王軍が見えた。それだけで怒りがこみ上げる。
「ネクスト!お前の首を貰いに来た。」
退却をしてる指揮官に何か言ってネクストだけ振り返って来る。
「どうしてお前達は命を粗末にするのだ?」
聞き流しゲインは装備をクロウに変えて飛び掛った。
火花が散る。盾で受け流し剣を構える。
ゲインは遮二無二攻撃を繰り返した。全て遮られる。
クロウの爪が1本折れた。後ろの地面に突き刺さる鈍い音が聞こえる。
「いい加減に諦めろ!」
そう言い放って盾でゲインを殴り飛ばした。
剣を突き付けゲインを見下ろした。
「貴様の腕で私は倒せぬ。出直してくるならいつでも相手を
 してやろう。だが引かぬなら容赦なく私はお前を殺す。」
喉元に剣を突き立てられた。何もできないままここで俺は死ぬのか。
不甲斐なさに涙が溢れてきていた。死んでもいい。ネクストを道連れに
出来るのなら。ウィルゲインは魔力を集中させた。
すかさずネクストは間合いを取った。
「ファイナルバーンか。」
ネクストが剣を構えて体制を整える。
「お前がそれを放つ前に私の剣がお前を貫く。
 お前は良く戦った。命を粗末にするな。」
ネクストがそう言い放った途端、ウィルゲインの背後から
禍々しい気配を感じた。ネクストもウィルゲインの後ろを凝視している。
「馬鹿な!なぜこんなところに・・・」
そう言ってネクストが数歩下がった。それを確認してウィルゲインも振り返った。
黄金の鎧を身に纏った骸の戦士がこちらに向かってゆっくり歩いてくる。
「デスナイト・・・」
そう呟いた。ここはギランから北東の森の中。しかもデスナイトは
MLCの深層に稀に姿を現すとしか聞いた事がなかった。
デスナイトはウィルゲインの横を通り過ぎるとネクストの前に立塞がった。
「昼間になんでこんなモンスターがここにいるのだ。
 1人では勝てぬな。」
そう言ってネクストはスクロールを取り出した。姿が光の中に消えた。
逃がすか。そう思った。立ち上がる。デスナイトが振り返った。
目の前に立たれるととてつもない威圧感を感じた。とても向かい合ってられない。
目線を下に落とす。デスナイトの剣。Chivalryの紋章が見えた。
「なぜその剣を持っている。お前は一体・・・」
その瞬間デスナイトの拳が飛んできた。ウィルゲインはその場に蹲った。
朦朧とした意識の中デスナイトは剣を地面に突き立て消えていった。




「おい、生きてるか?」
ウィルゲインは頬を叩かれてるのに気が付いた。
上体だけなんとか起こした。
「お前は?」
「Bibianだ、追撃の阻止を命ぜられたのだが追撃がなくてね、
 様子を探りに来たらお前が横たわってた。
 仇はとれたのか?」
俯いたまま何も言わなかった。言えなかった。
「ホーク殿が来なかったか?お前を援護しに行くと言ってたらしいのだが?」
あのデスナイトはホークだったのだろうか。目の前の地面に突き刺さっている
剣にはChivalryの紋章の刻印がある。たしかにあのデスナイトが持っていたものだ。
「おい、さっきから聞いてるだろ?なんとか言ったらどうなんだ。」
なんとか歩けそうだ。黙ったまま立ち上がりケントに向かって歩き出す。
「愛想の無い男だな。礼ぐらい言ったらどうなんだ。」
頬を膨らませてBibianが後に付いてきた。
「ありがとう、助かった。」
「へいへい。」
そのまま言葉も交わさずしばらく歩いた。
敵の死体、オークの死体。腕。吹き飛んだ足。
いやでも視界に入ってきた。辺りを見回す。Mfedorの死体はもう無かった。
「仲間の亡骸か?敵に利用されてはいかんといって軍師が回収してたようだぞ。」
「Restemはどうなのだ?」
「あの魔法使いか?意識がまだ戻らないらしい。
 切断された足はなんとか元に戻したらしいが血を流しすぎてると言ってたな。」
思わず地面を殴りつけた。自分の力量を呪った。
結局何も出来なかった。涙が頬を伝っていた。
「ダークエルフの癖に感情の起伏がはげしいんだな。
 精神訓練は受けてるんだろ?こっちは寡兵なんだぞ?
 いちいち仲間の犠牲でうろたえてどうするんだ。」
杖を肩に担いだままBibianは見下ろしている。
「Bibian、新参だな。今のお主には仲間程度にしか見えぬのであろう。」
「他になにがあるんだ?」
「さぁな、自分で考えろ。ところで本隊はケントに撤退で間違いないのか?」
「他に近い拠点があんのかい?」
ある訳が無かった、馬鹿な質問をしたものだ。
ウィルゲインは苦笑いを浮かべてそのまま歩いた。

ケント城に着いた。護衛兵が近づいてくる。
「たしかウィルゲイン殿でしたね。御無事で何よりです。」
「俺を知ってるのか?」
「岩塩改です。お話は伺ってますよ。居室を用意してあります、
 お連れの方とゆっくりお休みください。」
ウィルゲインはゆっくり振り返った。Bibianが訝しげな表情で立っている。
「私は疲れてなどいない。軍師はどこだ?」
「Bibian殿ですか?トワーク殿は今、作戦会議との事で我が姫と会談中です。」
「ならいい。腹が減った。」
そう言ってBibianは城内に姿を消した。
「ウィルゲイン殿、案内します。」
岩塩改がにこやかに言っている。
「ここは平和だな、くそったれ・・・」
そう呟いて岩塩改の後に付いて行った。


「亞圖夢殿、そなたは自軍の把握はできているのかい?」
「軍事は全ておしげに委ねてます。私が見てるのは内政です。」
「おしげをここに呼んで欲しいのだが、いいかね?」
亞圖夢が従者に合図をした。従者が去る。
トワークは煙草に火を付けた。天井に向かってゆっくり煙を吐いた。
視線を亞圖夢に戻した。狼狽してるのは明らかだった。
ギランまで落ちたのだ。一度後退したネクストがすぐさま進軍して
あっさりギラン城を制圧したらしい。
「お呼びですかな?姫。」
おしげが姿を現した。深い皴に隠れた眼からは表情は読み取れない。
「おや、トワーク殿。ギランが落ちたようですな。
 これは手痛い事ですな。」
「おしげ殿、そなたの隠してる実戦部隊を貸してくれ。」
「はて、隠してると申されましたか?」
トワークは目線を外しすぐさま煙草を投げつけた。
身軽な動きでおしげはそれをかわした。
「このような老体を試すものではありませぬぞ?」
「そして俺を相手に騙し通せるとも思わぬことだ。」
おしげが口元だけで笑い指を鳴らした。どこからとも無く
Elfが二人現れた。
「子奴らは私の両腕、エンプーサと赤狼王と言うものですじゃ。」
その名を聞いて少し考えた。赤狼王。たしか古い名簿に
名前があったはずだ。瀕死でおしげに拾われたのか。
「腕は立ちそうだな、Elfか。こちらからはDEとWIZを出そう。」
「頭を狙うのですな?」
また口元に笑みを浮かべておしげが言う。
「でかい獣でも頭を潰せば動きは止まる。そうだろ?」
そう言ってトワークはまた煙草に火を付けた。
 

軍師の境遇②-Mfedor死す-

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年10月18日(日)16時54分48秒
返信・引用
  Mfedorがネクストを抑えてるせいで敵の動きに隙が見えた。
左翼の引いた軍にまんまと追撃に入ってきたのだ。
すぐさまトワークは右翼の軍を迂回させ敵の追軍を囲んだ。
ネクストの後ろには魚燐に陣を組んだ本隊が居るが動けないでいる。
もともと魚燐の陣は機動性は無い。もう一方の鶴翼の陣を大玉とラグドールが
捉えていた。
囲んだ敵陣にヴィルゲインが凄まじい勢いで突っ込んだ。
敵陣が割れる。RestemはMfedorの援護に回ったようだ。
割れた敵陣に緋酉が食い込む。分断して殲滅していく。
Mfedorはトワークが考えていたより善戦していた。
斧と剣では戦い方がまるっきりかわってくる。
斬撃を受け止めるにしても斧での攻撃を受け止める事は出来ない。
衝撃が強すぎる。反撃できない。
Mfedorは遮二無二攻撃している。守りの姿勢はまったく見られない。
いつもの戦い方だった。だがネクストも斧の対処になれてきているようだ。
Mfedorの斧が弾き飛ばされた。残された斧を両手で握り締め、
少し距離をとった。
「お前では私には勝て無ぬ。引け。」
Mfedorが血相を変えて再度飛び込んで行った。
果敢に斧を振りかざす。ネクストに斧の動きはすでに読まれている。
全て空を切った。ネクストが剣を構え踏み込む。
剣の先端がMfedorの胸に突き刺さった。
「お前の負けだ。引け。」
言われてもMfedorは踏み込んで斧を振り翳す。
剣を突き立てたままネクストはかわした。
「なぜ引かぬ、このまま貫かれたいのか?」
ウィルゲインがMfedorの動きが止まった事に気が付いて
駆け寄ってくる。Restemも敵を振り払って駆け寄ってきている。
「引けだと?戦士に向かって戯言吐いてんじゃねぇ。」
Mfedorの口から血が溢れている。なおも踏み込む。
「お前の負けだ!引け!」
「なんだ?お前。昔の仲間の血盟に情でも沸いたのか?」
ウィルゲインが駆け寄る。
「Mfedor!引け!死ぬ気か!」
Restemは敵を振り切れないでいた。何か叫んでいるが声は届かない。
ネクストが一歩踏み込んだ。深く剣が埋もれていく。
Mfedorがひざまづいた。握っていた斧も地に落ちた。
「俺様は引かぬ、逃げぬ。」
「意地を張るな。ここで死んでも犬死だ。」
「逃げる位なら死んだ方がましだ!」
Mfedorが胸に突き刺さった剣を握り締め立ち上がる。
ウィルゲインがネクストに斬りかかった。
「ゲイン!お前の仕事は包囲した敵の殲滅だ。
 ここは俺様に任せておけ。」
「お前は死なせない。死んでもらっては困るのだ。」
ネクストの本陣が前に出る。相当な圧力だ。
本陣に向かってホークが横から突っ込んでいる。
「ゲイン、ホークの援護を。何度も言わせるな。
 こいつは俺が何とかする。」
ネクストはウィルゲインの双剣を盾で受け止めたまま黙っている。
ウィルゲインはホークの援護に回った。敵の本陣が二つに割れる。
「お前の陣は崩れたな。この場は俺様の負けだろうが
 戦には勝ったぞ。ついでにその首を置いて行け!」
Mfedorが握ったネクストの剣をそのまま折った。
ネクストが一歩ひいてダガーで斬撃を放つ。
Mfedorの全身が紅に染まった。だが一歩も引かない。
「お前を殺したくはない。頼むから引いてくれ・・・」
「敵に情をかけるな。戦士の鉄則だ。地獄に付き合え!」
ネクストのダガーを左腕で受け止めた。すぐさま斧を
拾い上げる。
「さぁ!楽しませろ!こっからだぜ!」
ネクストの頭上に斧が迫る。無意識にダガーを引き抜き
再度突き立てた。根元まで埋まった。
「引けと・・・言っただろう。」
その場に倒れこんだMfedorにRestemが駆け寄ってきた。
もう手の施しようがない。
「Mfedor、気をしっかりと持つのだ。今助ける。」
それしか言えなかった。Restemの手を掴みMfedorが首を横に振っている。
「天下ぁ、取れよ・・」
ネクストはただ見下ろしていた。軍の指揮を取る事も忘れているようだ。
Restemは必死にヒールの魔法を唱えた。どうしても血が止まらない。
「おい、お前。同じ戦士なら解るだろう?さっさと止めをさしやがれ・・・」
「バカを言うな。今助けると言ってるだろう!」
ネクストがMfedorの斧を拾い上げた。
「Restemとやら、どいてくれ。」
「お前、もとはChivalryだったんだろ?俺の代わりになれよ。」
「話が飛躍してるな。」
「だろうな・・・さぁ殺せ。」
ネクストは斧を振りかぶった。
「Restem、ゲイン。楽しかったぜ・・」
Mfedorの首が切り落とされた。
 

軍師の境遇①

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年 9月28日(月)21時13分20秒
返信・引用
  外壁の外から喚声が聞こえた。オークの援軍だ。
さすがに反王軍は一度陣を引いた。ギラン城内に静けさが漂う。
護衛兵がぱやの亡骸を運んできた。
Koaが駆け寄ったがトワークが止めた。
「お前は見ない方がいい。」
傍で見ていた緋酉がKoaとトワークに向かい口を開く。
「見ても構わぬだろう、どうせぱやだとはもうわからぬ。」
「よせ、緋酉。」
「解っただろう?これが戦だ。身近な者が一瞬で肉の塊になる。
 リザレクションで復活させられるのは仮死状態の者だけ、
 ここまで切り刻まれたのではクリエイトゾンビくらいしか
 手は無いだろうな。」
「もう言うな!」
両腕を上げて緋酉は部屋に戻って行った。
ウィルゲインがトワークの所に報告に来た。
「ホーク殿が部屋から出てきません。今後の作戦を決めるのに
 ホーク殿がいなければ話になりますまい。」
「わかった。」
そういってトワークは寝室に向かった。
部屋で一人考え込む。反王の軍勢はWWを落している。
全軍をこちらに向ける体制が整った事になる。
二日後には到着するだろう。防備は間に合うのか。
守り切れるのか。兵が足りない。今思っても仕方の無いことだった。
誰かが扉を叩いている。
「入れ。」
「作戦はどうなった?」
「ホークか。」
ホークは椅子に腰掛け酒を取り出し飲みだした。
「ぱやも死んだ。殿もな。皆死んで行く。ワシを残して。」
「乱世が嫌になったか?」
燈台の蝋燭の炎が揺らめいていた。
ホークに勧められてトワークも杯を空けた。
「なぁ軍師よ。勝ち目が見えてるのか?」
トワークは口を開かなかった。
「俺はな、少々この乱世に疲れてきた。
 守るべき力を備えたと思った。誰も死なせないと。
 でも皆死んで行く。この力に何の意味があるのかと
 疑問に思えるのだ。結局守れなかった。」
「お前は十分守ってる、血盟の名前をな。」
「それは体裁だろう。」
「あまり飲みすぎるな、明日にでも攻めてくるやも知れぬ。」
「殿はいつでも飲んでいたな。」
「そうだな・・・」
そのまま言葉も交わさず飲んだ。
だが酔えなかった。時間だけが経っていく。
ふと伝令の兵が駆け込んできた。
「反王軍の先発部隊が目前に迫ってます。
 指揮官はネクスト、重装備の歩兵部隊です。」
指揮官の名前を聞いてホークは耳を疑った。
昔共に戦った戦士の名前だった。


日が昇る。城の外で陣を構えた。
もう耐え切れる城ではない。修復の時間さえなかった。
トワークを中央に堅陣を構えオークの部隊が両翼に広がっている。
魚鱗と鶴翼を混ぜた陣形だった。
敵陣から一人こちらに向かって歩いて来た。
トワークは首を横に振っていたがホークはそのまま
歩き出した。
「久しぶりだなホーク。」
「乱世が嫌で姿を消したお前がなぜ反王の手先になったのだ?」
「逆だなホーク、乱世を終わらせる為だ。」
ホークは剣を抜いた。辺りに緊張が走る。ネクストが笑みを浮かべた。
「戦争を終わらせたい。力の強いものに付いてこの乱世を終わらせる。」
ホークは剣を下ろした。拳を握り締めている。
「反王の治世に何の望みがあるのだ!ふざけるな!
 あやつの治世を、今の現実を打開する為に団結したのではないのか!
 今口にしてることの意味をお前は解ってるのか!」
ホークはネクストを睨みつけたまま動かなかった。
「治世は問題ではない。この乱世を終結させるのが急務。
 治世はどうでもいいんだ。戦乱の世が無くなればそれでいいではないか。」
地面に剣を付きたて手を添えたまま、静かにネクストは話している。
「Skydancerは所詮そこまでの男だったんだよ。治世だけを望み
 力を求めず少数のちっぽけな血盟を抱えて病死だと?
 付いて行く男を間違えたな、ホー・・」
ホークがネクストの喉元に剣を付きたてた。辺りに緊張が走る。
「ネクスト、貴様がどう思っていたかは知らぬが
 言葉に出すべきではなかったな。我が血盟員に手を出して見ろ、
 俺が必ず貴様を殺す。」
剣を鞘に収めて自陣に戻ってきた。
「何の話をしたのだ?ホーク。」
トワークが問いただす。ホークは一度大きく息を吐いた。
「もしかしたらと思っていた。ただの敵だと解った。それだけだ。」
「それでどう攻めるんだい?軍師さんよ。」
「Mfedor、攻めるのではない守るのだ。敵の動きを見て
 各隊に伝令を出す。それまでこの陣形で待機だ。」
「敵の指揮官の首、取れば終わりじゃねぇか。
 じっとしてるのは性にあわねぇなぁ。」
斧を振り回しながらMfedorは持ち場に戻った。
「トワークよ、あの男だけはワシが倒す。」
「わかった。だがその前に少し気を静めるのだ。ホーク。」
「Koaはどうしたのだ?」
「ぱやが死んだのは自分のせいだと思い込んでいる。
 今しばらくはそっとしておくしかあるまい。
 まぁ、大玉が参戦できるのでな。」
ホークは辺りを見回した。大玉とラグドール。その後ろに
凄まじい数のサモンモンスター。ラグドールと言う若者。
あの歳であれだけのモンスターを召還して従えている。
表情に幼さがまだ残っている。末恐ろしい存在だ。
敵の指揮官に動きがあった。DEのソルジャー達も鶴翼に広がった。
最初のぶつかり合いで全軍が交戦状態になる。オーク達では持ちこたえ
られないだろう。トワークは各隊に伝令を飛ばした。
動き出すと同時に右翼を前に左翼を後方に動くように伝達した。
Mfedorとホークが雄叫びをあげる。オーク達がそれに続いて叫ぶ。
全軍敵に向かって走り出した。ネクストが先頭で鶴翼のまま突っ込んでくる。
「Mfedor!出過ぎだ!自滅するきか!」
トワークは叫んでいた。
「お前が敵の大将か、俺様はMfedor。貴様の首を貰いに来た!」
そう叫びながら両手の斧を振りかざす。ネクストが剣で受け止めた。
火花が散る。ネクストが剣を振り払う。Mfedorが後ろに飛んでかわした。
「お前みたいな男もいるのだな。今のChivalryには・・・」
ネクストは剣を構え、低く構えた。
「お前強いな。楽しくなってきた。」
ソルジャーが二人飛び掛かってきた。すぐさま両手の斧を投げつける。
頭蓋を割られて伏した。Mfedorは腰から斧を二本取り出した。
「お前、それはグレートアックス。まさか斧の二刀流か?」
笑いながらネクストは呆れたような声で言った。
「これが俺様のスタイルだ。甘く見てると頭蓋が割れるぜ?」
駆け寄ってきたRestemが慌てて付加魔法をかける。
「さぁ、準備は整った。楽しもうぜ!」
そう叫んでMfedorが突っ込んだ。
 

Chivalry-運命の歯車-③英雄ぱやの死

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年 8月19日(水)20時45分57秒
返信・引用
  ギランへの援軍。
先ほどのDEからの情報だとそれほどの規模では
攻めていないらしい。ただ指揮官の若いDEは反王のお気に入りだと言う。
ホーク達援軍が到着した時にはギラン城の外周門は破壊されていた。
ただ内部から喚声が聞こえる。間に合ったようだ。
「ホーク、とりあえずギラン城の本丸まで行かぬことには
 話にならぬ。行き方は任せる。」
そういってトワークは武器の点検を始めた。
城の城門前で必死の抵抗がなされている。
敵の指揮官はずっと後方だろう。敵の注意を引きその間に
小さく固まって突っ込むしかなかった。
囮に誰を伴うか。地味な動きでは注意は引けない。
「ぱやは本隊を護ってくれ。俺とフードル、緋酉で
 敵を引き付ける。その間にギラン本陣と合流するのだ。」
「そっちはどうするの?その後どうやって戻るんだい?」
「策はある。トワークのタイミング次第だ。」
援軍部隊を全軍横に広げぱやが雄叫びを上げた。
そのままの陣形で突っ込む。敵がこちらに気が付いた。
矢がこちらにも飛んできた。ナイトの一団が素早く前に出て
矢を打ち払う。緋酉が敵陣に向かってイラプションを放った。
そのまま数発放ちながら横に動く。囲う様にホークとフードルが後を追う。
ふと向きを変え、ホークとフードルが凄まじい勢いで突っ込んだ。
緋酉が呪文を唱える。神秘的な力で二人を覆った。
城門に集っていた敵軍がこちらに靡く。
「それでも反王の軍勢か!かかってこい!」
フードルが叫びながら敵陣深く突っ込んで行った。
斧を両腕に持ちながら遮二無二に進んでいる。敵の陣が二つに割れた。
後ろに控えていたぱやの一団がその空隙に突っ込んだ。
血塗れのフードルが倒れている。すかさず肩に抱えぱやは走った。
城門が少し開きなだれ込む。フードルをWIZが囲んだ。
「ホークと緋酉は!?」
ぱやが叫んだが城内にはいない。
「城門を開け!俺が行く!」
「今開ける事は出来ません!」
「トワーク、策があるといったな?間に合うのか?」
「今に援軍がくる、敵の注意はそれるはずだ。」
「当てになるのか?あの二人だけでは無理だ!」
「今は耐えろ。無駄に動いてはならぬ。」
ぱやは舌打ちして階段をかけ上った。テラス。そこからいくしかない。
外が見えた。城門には敵はいない。少し後ろでホークと緋酉が敵に囲まれている。
躊躇もなくぱやはテラスから飛び降りた。城門に駆け寄る。
「ここに敵はいない!門を開け!付加魔法だけかけてくれればいい!」
Koaが城門を開き魔法を唱えた。
「すまない。あとはなんとかする。門を閉じろ。」
「一人でどうやって!」
「WWも落ちたんだ!ここを落とされたら後がない!」
「でも・・・」
「いいから閉めろ!」
Koaを突き飛ばし城門を閉めた。ブレイブポーションを飲んだ。
大玉に一人戦いを挑んだときの気分に襲われた。
足が竦む。雄叫びを上げた。今は俺がChivalryだ。太ももに
短剣を突き刺した。全てを吹っ切る。剣を構えて突っ込んだ。
「ホーク、緋酉!城門に向かって走れ!」
叫んだが声が届かない。乱戦になった。背中に誰かぶつかった。
「ぱやか!緋酉の魔法が切れそうだ戻れそうか?」
緋酉がふと目の前に現れた。
「道か。作るから走れ。」
ファイアーウォールが2本走った。
「その間を駆け抜けろ。ぱや、殿軍を頼む。」
そういって二人が走り出した。ぱやも後ずさりしながら敵を切り倒す。
数が多すぎる。すでに無数の浅手を受けていた。矢も数本突き刺さっている。
ホークと緋酉が城内に入ったのを確認して一気に門の前まで下がった。
「緋酉、敵の様子は?」
「強敵ではない、だが数が多すぎる。」
「ホークほどの男でも無理か・・・」
Koaが駆け寄ってきた。
「トワークさん、それよりぱやさんを助けなければ!」
「手遅れだ、敵がまた門の前に集まっている。」
「私が援護します!」
「フードルの回復でMPも尽きているだろう。今行っても邪魔になるだけだ。」
「見殺しにするんですか!」
「今オークの援軍がくる。テラスから回復魔法もかけている。」
Koaがそのまま城門に向かって走り出した。
「おい!何のつもりだ!」
「直接魔力を回復できるのでしょう?これを飲んで援護します。」
「馬鹿!よせ!」
Koaは城門を開いてホークに貰ったポーションを飲み干した。



飲み干した空き瓶を落とし、そのまま蹲った。
ギランの衛兵が慌てて城門を閉じ、声をかけながら肩に手を触れた。
トワークはとっさに衛兵の鎧に手をかけ引っ張った。それと同時に
何かが弾けた。衛兵の腹が抉られている。
「Koa!こ奴は味方だ!」
ゆっくり立ち上がり振り返ったKoaを見てトワークは背筋が凍りついた。
無表情で衛兵に視線を落とす。
「触れるから悪いのよ・・・」
そう呟いてKoaは開きかけた城門に手を翳した。重い城門が木の葉の様に吹き飛んだ。
「敵はどれ?誰が邪魔をするの?」
無防備にKoaが敵陣に歩き出した。トワークはそれを横目で捉えながら
衛兵の治療に向かった。
「あの一瞬でここまで・・・」
トワークは絶句した。膵臓が砕け散っていた。臓器まではWIZといえど
修復できない。あやつ、大玉以上の器か。そう思った。鎧の上から
内臓まで瞬時に抉り去った。それにあの目。今まで感じなかった畏怖を
初めて感じた気がした。
「ぱや!Koaの援護を。一人では無理だ。」
「解ってる。付加魔法を、もう誰も死なせやしないよ。」
そういってぱやはKoaの後を追った。

目の前の集団。ホークと緋酉が囲まれている。
緋酉が巧みに攻撃をかわしひたすらホークに回復魔法をかけている。
ホークも無数の浅手を受けていた。剣はすでに刃こぼれだらけだった。
その敵の集団に無防備でKoaは歩み寄っていき敵兵の頭を後ろから鷲掴みにした。
「今、貴方たちが攻め立てているナイトと魔法使いは私の仲間、
 無礼は許さぬ。」
そのまま後ろに向かって片腕で敵兵を放り投げた。
城壁に叩き付けられ無残な姿を残している。
「邪魔立てするなら容赦はしません。」
そう小さく呟いて近くの敵兵の後頭部に手を翳した。サンバースト。
敵の頭蓋が砕け散り辺りに肉片が飛び散った。
囲んでいた敵兵が一斉に振り返る。
「見渡す限りの敵陣・・・」
「Koa!何をしている、早く逃げろ!」
血塗れのままホークは叫んだが、Koaの目を見て何も言えなくなった。
今まで数多の戦場を乗り越えてきた。大玉とも戦った事がある。
そのどれとも似つかない畏怖に襲われた。
敵のDEが単身Koaに切りかかった。Koaの右腕がゆっくり上がった。
顔に微笑を浮かべたまま腕で敵の剣を受け止めた。
「馬鹿な!」
思わずホークは声に出していた。一瞬周りが静寂に包まれる。
次の瞬間、呆然としているDEの目にKoaの指が突き刺さった。次の刹那。
DEの上半身が砕け散った。血塗れの手を眺め笑い始めた。
敵の小隊が背後に回りこんでいる。
Koaに向かって切りかかった。ぱやの剣がそれを受け止めた。
ゆっくり振り向きKoaが口を開く。
「小癪。」
Koaの動きを見ていたホークが叫んだ。
「ぱや!伏せろ!」
ぱやの頭の上を何かが走った。敵の胴がずり落ちる。
「惰弱なり反王軍。塵に化すがいい。」
そう言いながらKoaが腕を翳す。無数のゾンビがKoaを覆った。
ゾンビの一体に魔法をかけた。炎に包まれたゾンビが悲鳴を上げる。
そのゾンビを敵陣に向かって殴りつけた。凄まじい勢いで弾け飛ぶ。
「まさかあの女WIZ。」
敵の指揮官が呟いた。そして副官3人を呼び寄せKoaを囲ませた。
だが近くまでは行けない。距離を保ったまま動きが止まった。
「そんな遠くで何を仕掛ける。スティングでも放つのか?」
Koaがそう言った途端に無数の刃が飛んできた。
koaが呪文を唱える。竜巻が辺りを包んだ。刃も弾け飛ぶ。
「ケントからの援軍、まさかあやつ大玉か!」
その名を聞いて反王軍の足も止まった。Koaがよろめいて地に伏せた。
「酒が切れたか!トワーク!援護してくれ!
 Koaは俺が連れ帰る!」
蹲ったKoaを抱えてぱやが敵軍を凝視している。
敵の増援部隊、レンジャーが無数に視界に広がった。
矢が壁のように放たれた。Koaの上に覆い被さった。
ぱやの背中に無数の痛みが走る。Koaは動けない。
城門。開いている。ホークが必死の形相で手招きしていた。
ぱやはKoaを殴りつけた。
Koaが眼を覚ます。状況が掴めていない。
「いいかKoa、あの城門まで振り返らずに走れ。いいな?
 振り帰るな!」
「ぱやさん、何がどうなって?」
「いいから走れ!」
ぱやに怒鳴りつけられてKoaは城門に向かって走り出した。
ぱやも後を追った。城門までたどり着いた。Koaは無事だ。
「あの勢いで来られたら城門が持ちません!」
ギランの衛兵が叫ぶ。
「閉じろ。」
「馬鹿を言うなぱや!早く入れ!」
「いいから閉じろ!」
そう言って門を自らぱやは閉じた。振り返る。
無数の敵、無数の矢。
「俺をなめるな!」
ぱやは雄叫びを挙げて敵に突っ込んだ。勢いが止まる。
5人、6人、切り倒す。矢が肩に食い込む。
全身矢だらけの姿。ポーションの手持ちは尽きた。
「殿、土産話が沢山あります。待っててください。」
そう呟いてぱやは再度突っ込んだ。敵陣に吸い込まれ戦士が一人、
倒れた。そして城門は完全に閉じられた。
それを眼で確認できた。
「ここまでです。殿。今行きます・・・」
DEの槍がぱやを貫いた。
 

Chivalry-運命の歯車-②

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年 8月17日(月)20時24分20秒
返信・引用
  難なくアデン城内に潜入できた。
「子供を一人救いだすのに3人もひつようだったのかねぇ?」
フードルが斧を振り回しながら言った。
確かに護衛と呼べる兵力は無かった。
ヴィルゲインはなるべく静かに敵を始末しようとしていたが
フードルが先に首を落としている。死体すら隠していない。
「フードル、軍師が誰でもいいから一人生きたまま連れて来いと言った。
 忘れてはいないだろうな?」
「ゲイン。この辺の奴らがいい情報を持ってると思うか?
 最後に出てきた奴を捕まえようぜ。」
ヴィルゲインは苦笑して頷いた。忘れてはいないようだ。
「ところで軍師ってのはトワークの事か?」
「他に誰がいるのです?」
「今この場の軍師はリステム、お前でいいよ。」
恐らくフードルは軍師が嫌いなのだろうとリステムは思った。
根っからの軍人なのだ。叩き上げで今まで来たのだろう。
地下につながる階段を見つけた。フードルが躊躇なく降りていく。
気配を感じた。身を伏せる。双剣。空を切った。
あわてて体制を立て直す。振り返ったが押さえ込まれた。
ダークエルフ。首を押さえつけられた。口に笑みを浮かべている。
そのまま首だけがずり落ちた。
「いくら鎧を着込んでも首を狙われたら終わりだぞ。」
落ちた首の後ろにヴィルゲインの顔が見えた。
「だからお前がいるんじゃねぇか。」
フードルは首の無いDEの体を蹴飛ばし埃を払う仕草をしながら言った。
「で、リステムはどこだ?」
探していると奥から子供を抱いたリステムが歩いて来た。
「記憶を奪われているな。何を話しかけても反応が無い。」
「いったい誰が?」
「ケレニス、だろう。」
不意にリステムが子供をフードルに預けた。
「フードル、お主は動くな。殺してしまう。」
「なんだってんだよ。」
「追っ手だ、二人来ている。ヴィルゲイン。左の奴を頼む。」
言った直後にヴィルゲインは背後に回ったようだ。
すでに首が無い。もう一人のDEが弓を構えてリステムを狙っている。
「捉えるのはこやつでいいかな。」
そういってリステムが無防備に進んでいく。
DEが矢を放つ瞬間に動きが止まった。麻痺魔法か。
そのまま麻痺したDEに馬乗りになり無表情で顔面に拳を叩きつける。
しばらくしてリステムがDEを引きずってきた。
「おい、生きてるのか?」
「かろうじて。死にかけたらヒールでもしてやるさ。」
そのままDEの片方の足を掴みながら歩いて行った。
フードルがヴィルゲインの肩を叩いた。
「あまり怒らせない方がよさそうだな。」
「どういう意味だ?」
「解るだろ?あのDEも損な役に回ったな。」
「だったらMR装備でも揃えるんだな。」
苦笑しながらヴィルゲインがリステムの後を追った。
「俺なら魔法をかけられる前に両断してやるさ。」
そう呟いて後を追った。


トワーク一行はケント城に入城した。
OTの守備はかおりぃんと野獣王に任せた。
あの二人がいれば反乱程度なら1日で片付けるだろう。
城主と早速面会になった。玉座のある部屋に案内された。
ここにくるまでの間、トワークは見かけた文官に片っ端から話しかけてきた。
今後の展開をどう見るか。こちらの軍勢をどう見てるのか。反王の動向。
全て的外れな答えばかりだった。よくいままで滅びずに存在できたものだ。
ただ一人、おしげというWIZは何も言わなかった。
ここで語るべき質問なら答えるが意味はない。
そう言い放って颯爽と姿を消した。
こちらの君主はまだこないらしい。
「Chivalryの君主はぱや。それで話を進めるが異存はないな?」
ぱやが何か言おうとしたが大玉が魔法で眠らせた。
「前置きを持たせると切がない。この男は実戦で力を見せる
 いきなり引き出そうではないか。」
「大玉、お前も酷な奴だな。仕方あるまい、それでいこうか。」
Koaだけ落ち着かなく歩き回っている。ホークの傍に来た。
「ギランに援軍は送らなければなりません。やはり
 私たちが行く事になるのでしょう?兵糧などは支援してもらえるでしょうが
 肝心の戦力に不安が残ります。すぐに援軍を送るのでしょうか?」
Koaはもう仲間から死人を出したくないのだろう。
万全の体制を望んでいる。しかし一刻を競うのは目に見えている。
亞圖夢の采配次第、先は見えない。
俺が何とかする。言おうとしたが言葉にはならなかった。



別働隊が帰ってきた。子供を一人抱えている。
大玉はそのまま子供を抱きかかえ泣きじゃくっている。
子供は何の反応も示さなかった。記憶、意識すら奪われている。
泣き崩れる大玉をKoaが居室に案内した。
その後、暫くしてケント城主が顔を出した。
「ウィンダウッドが落とされたようです。」
トワークはすでに手の者の情報で掴んでいた。ケント城主、いや
ケントの重臣達ですら諜報部員を擁していない。亞圖夢は憔悴した
表情でうろたえていた。
「残るはギランにここ、そしてChivalry領地だけとなったな。」
「まだギランがある、そこに援軍を送り持ちこたえさせる。」
おしげだった。かなりの老齢で皴に刻まれた顔からは表情すら見えない。
「ギランが落とされれば?」
トワークが椅子に腰を下ろしたまま視線も変えずに言った。
「ウィンダウッドに続いてギランまで落城。その先がお主に見えるのか?」
「見えるさ。真っ暗な闇がな。」
「おぬしは当に見抜いておるのだろう?攻めには不得手な国だ。」
「そして我が血盟は戦い尽くしてきた。」
「今ギランが落ちれば共倒れだな、トワーク殿。」
表情も変えずに淡々とおしげは喋っている。
RestemがDEを引きずって前に出てきた。
「軍師よ、一人生かしたままに連れてきた。
 あとは任せる。任務達成ですかな?」
「よくやってくれた、こいつからは反王の情報を引き出さねば
 ならぬ、次は遊軍だ。体を休めろ。出発は遅くて2日後だ。」
ヴィルゲインが後ろで苦笑いを浮かべている。口を開いた。
「遅くて。ですね。明日の朝一で出動出来るようにしておきます。」
「なんなら今すぐ斬り込んでやるぜ!ケントのお姫さんよ、
 兵糧さえ用立てしてくれればギランの包囲網くらい、
 俺様一人で壊滅させてやるぜ?」
「一人では危険です。我が姫にも少しお時間を頂きたい。
 Mfedor殿。今しばらくお待ち願いませぬか?」
ふいにトワークが声を出して笑い出した。
「そやつはいつも先鋒を願い出る。本人は本気だろうが真に受けるな、
 岩塩改。それより捕虜のDEだが・・・」
緋酉がDEの首を捕まえている。
「尋問、私に任せろ。おしげとやら、この城に地下室はあるか?」
「廊下を出て衛兵に尋ねるがよかろう、防音は抜かりなく出来ておる。」
「そうか、トワーク。2時間もらえるか?こやつの体に直接聞く。」
「あくまでも捕虜だ、殺すな。緋酉。」
「息をしていれば文句はないのだな?任せておけ。」
黒装束の端から笑みが見えた。DEの髪の毛を掴み緋酉が部屋を
後にした。
「ギランに援軍を送らねばなるまい。
 我が軍が出よう。物資の補助を願いたいのだが。亞圖夢殿。」
いままで黙っていたホークが口を開いた。
「そうですね。ウィンダウッドを落とした兵がこちらに
 矛を向けるかもしれません。この城は護りぬきます。」
明朝に出発。猶予は無い。いままで猶予のある戦いは無かったはずだ。
「トワーク、大玉は明日進軍できるのか?
 お主の命を受けて子供を助け出した。あの様子では・・・」
「ホーク、OTでの一件は俺も知っている。Koaと言ったか?
 あの女WIZに大玉の代わりをさせる。
 このポーションを渡しておいてくれ。」
トワークが懐から瓶を取り出しホークに渡した。
紫色の液体が入っている。
「この中身は?」
「解っているだろう?いざとなったら飲めと伝えろ。
 効果は適当に伝えてくれ。その時が来たら味方は非難させておく。」
酒か。確かに酔ったKoaは大玉を凌ぐ魔力を感じる。
だがどこまで通用するのか。酔ったKoaを制御できる者は血盟にはいない。
束の間の睡眠を貪るしかない様だ。
ケント城の地下室から夜明けまで叫び声が聞こえた。




目が覚めた。ケント城の一室。亞圖夢がいた。
「目が覚めたようですね。お疲れなのでしょうか?
 今Chivalryを率いてるのは貴方だと聞きました。」
「多分・・・そうなんだろうね。」
「多分?」
ぱやはあたりを見回した。誰もいない。気配も無い様だった。
「今この会話を聞いてる人は他にいないみたいだね。」
「私と貴方だけです。」
「僕が君主代行です。そうなったみたいだ。」
亞圖夢は少し頭を傾げながら聞いている。
ぱやは起き上がって装備を整えた。ウルフが剣を咥えて尻尾を振っている。
その剣を掴んで一振りして鞘に収めた。
「Chivalryの君主、病死したそうですね。
 それで貴方が今君主だと聞いてます。
 我々は同盟をした間柄、統一しませんか?」
「一つ言っておきたい。我が君主は戦って朽ちられた。
 病死ではない。それと亡き殿の志は生きております。」
「今は一つになって全力で当たるべきです。」
そんな事はぱやも解っていた。なぜ皆が自分を選んだのか。
「我々はどこまでも亡き殿について行く所存です。」
「もう死んだのですよ?気持ちはわかりますが・・・」
「ならば墓まで付いて行く所存です。」
「わかりました。無理強いはしません。
 ギランの援軍。任せてよろしいですね?」
「心配ないよ、それよりケントを守り切って。ここが砦だから。」
強張った笑みを亞圖夢が浮かべた。


Koaの叫び声で皆が集まった。ケントの地下室の入り口。
全身血まみれの緋酉を前にKoaが座り込んでいた。腰が抜けたのか。
緋酉はDEを引き摺って出てきた。情報は聞き出したようだ。すぐさま
トワークとホーク、ぱやに伝令が飛んだ。
「なぜ殺したのです!」
緋酉は何も言わずにDEを突き出した。息はしているが両腕が無い。
全身の皮膚を剥がされもはや面影すら残っていない。
「まだ、息をしているな。」
「だからって、ここまでする必要があるのですか!
 酷過ぎます!」
ゆっくり緋酉が顔を上げた。黒装束に包まれ表情は見えない。
「酷いのが戦だ。納得が行かぬのが戦だ。我々は所詮兵隊だ、
 人を殺す事に正義があると思ってるのか?お前も俺と同じだ。」
「そんな・・・」
「仲間を死なせたくないのだろう?だから敵を尋問にかけ、情報を
 引き出している。それすらやめて仲間から死人を出したいのか?
 だったら囮にすればいい、そいつを犠牲にして作戦が有意義に進むだろうよ。」
ホークがDEの傍にしゃがみ込んだ。
「緋酉、死なせてやれ。」
「いいのか?ホーク。まだ情報を持ってるかもしれないぜ?」
ホークがもう一度DEに目線を落とした。
「死なせてやれ・・・」
切断された腕は焼かれていた、あれでは失血死すら出来ない。
「解ったよ、最後くらい苦痛無しで葬ってやるか。」
と言ったと同時に緋酉の剣が閃いた。DEの首が落ちる。
「これからギランの援軍に向かう。皆、
 準備はいいか?」
「出来て無くてもいくんだろ?ホーク。」
苦笑いを浮かべてホークはKoaの傍に行った。
「これを使うといい。」
そういってトワークにもらった瓶を渡した。
「Koa、気持ちはわかるが緋酉の言ってる事も
 解るだろう。非情になれ。戦なんだ。」
「これは?」
「トワークが特別に調合した薬らしい。
 魔法使いにしか効果が無く、マナポイントを
 直接回復させると言っていた。最後の手段に持っていて
 いいだろう。」
そう言って皆の装備を確認しに行こうとした、トワークが
目を合わせる。
「なかなか方便も上手いではないか、ホーク。」
そういってトワークは笑っていた。
 

Chivalry-運命の歯車-①

 投稿者:Skydancer  投稿日:2009年 8月 2日(日)20時49分16秒
返信・引用
  Chivalryの君主が病死。
ケント城ではすでに話が広まっていた。
「同盟相手の君主が没したようですね。」
「反王が不穏な動きを見せています。我が血盟に取り込む
 いい機会だと思われますが。」
「おしげ、まだ向こうは混乱しているでしょう。
 取り込むなどまだ出来るとは思いません。」
「姫、心中察しますがこちらも猶予がないのです。」
会議場のそとが騒がしくなった。一人の兵士が連れられてきた。
「伝令、反王軍がギランに侵攻中。ギラン城主から
 援軍派遣要請が来ています。」
さらに場が騒がしくなった。亞圖夢が立ち上った。
「おしげ、誰かOTに派遣して現状を確認して来てください。」
おしげは頭を下げ部屋を後にした。

城内の通路で待たせていた若いエルフに声をかけた。
「岩塩改、お前は死んだChivalryの君主と知り合いだったな。」
岩塩改は黙って頷いた。
「OTに出向き、現状を確認して来い。
 特に誰がいまChivalryの頭なのかしかと見極めてくるのだ。」
「どれほどの時を頂けますか?」
「反王がギランに侵攻し始めた。あまり時はやれぬ。」
「2日ください。」
おしげは頷いてもう行けという風に腕を振った。


「で、この先どうすんだ?ケントに吸収されちまうのか?」
「Chivalryはこのままだ、変わりはしない。変えるつもりも無い。」
「君主がいねぇ血盟か、せめて代行はひつようなんじゃねぇのかい?
 俺はあんたでいいと思うぜ。ホークさんよ。」
「ワシは無理だな。その場で敵に合わせてどう軍を動かすのか。
 それくらいなら判断できるが先を見通して軍を動かす力は無い。
 フードル。他に適任者はいないのか?」
フードルが両腕を上げて頭を振っている。
「以前、私が戦った男でSkydancerの志を語った男がいる。
 そやつに任せようではないか。」
「大玉、誰のことだ?」
大玉が杖だけ向けた。ぱやが驚いた表情をしている。
「そやつか、そやつならワシらオークも付いて行こう。
 目に澱みが無い。純真な若造みたいだしな。」
「ちょっと待ってよ。無理だよ。大体そんな統率力なんて持ってないよ。」
ぱやが必死に弁解してる最中伝令の兵が来た。
ケントから使者が来てるという。若いエルフが入ってきた。
「ケントから使者として参りました岩塩改と言う者です。」
「大方こっちの内情を探って来いと言われたんだろう?
 お前が知りたがっている奴が今決まったところだ。
 ギランに反王が攻めているから焦ってるんだろうよ。
 ついでだからお前と共にケントに向かう。さぁ行こうか。」
トワークがそういってぱやの腕を掴んだ。
「緋酉、お前も来い。相手は反王だ。」
「俺も行くぜ、詳しく聞かせろよ。」
「フードル、全員を揃えろ。どの道全員一度行った方がいいだろう。」
そういってホークが準備を整えだした。Koaが口を開く。
「せめて殿の喪が明けるまで、1日だけ待ってください。」
「そのつもりだ。」
Skydancerの亡骸は死んだ戦場に埋めた。
戦死した将はそこの土に帰る。ヴィルゲインが黒魔石で墓標を作った。
「岩塩改とやら、今日はここに泊まっていけ。2・3日はもらってきてるんだろ?」
岩塩改は黙って頷いた。



その夜、岩塩改はChivalryの面々と顔を合わせた。
ホークと呼ばれているナイト、普段おとなしい印象だったが
何か質問される時の鋭い眼光はまさに歴戦の武将だった。
そしてChivalryの双肩を担うというぱや。
まだ幼さの残る顔立ちで本当に強いのか、疑念しか浮かばない。
緋酉と呼ばれているWIZ、顔を黒装束で覆い隠し鎧を着ていた也はナイトにしか
みえなかった。ただ肌に突き刺さる感覚はある。恐らくカオティックだと思った。
KoaというWIZは君主の死が堪えたのか俯いたままだった。
大玉、腕を組んでずっと見下ろされた。懐疑の念が込められた
凍てつく視線だった。
岩塩改が一番警戒したのはトワークだった。
正論でぶつかって来て相手の性根の有り様を見据え、策について尋ねる。
相手の知力を探りながら常に目を合わせてくる。
心の奥底まで見透かされてるような感覚に陥った。
最後にトワークに聞かれた。
「反王は今後、どう動くと思うんだ?」
トワークの言葉。裏に何があるのか必死に考えた。
思っている事の内言葉に出しているのは2割程度だろう。
慎重に言葉を選んで答えた。
「ギランの防衛は今まだ持ちこたえているようです。
 恐らく本隊はギランの戦線には来てないと思います。
 ギランに援軍が入るのを見越してまとめて殲滅する気なのでは
 ないかと存じ上げます。」
トワークが口元だけで微かに笑った気がした。
「明日はお前に安全な道を案内してもらう。
 いわば斥候だ。もう休め。」


岩塩改を客間に移した後、トワークに呼ばれた。
「ホーク、あの小僧。どう見えた?」
「なかなかの見識は持ってるようだな。」
「ぱや、お前が反王だったらどうする?」
「そうだね、一気にギランを攻め落として足場を固めるかな。」
トワークは酒の入った杯を空けた。そのまま椅子に腰を下ろした。
なにか考え込んでいるようだ。トワークは何か作戦を練る時、
いつも何かに腰を下ろし、右の人差し指を細かく振る癖があるようだった。
指が止まった。
「大玉、どう見る?」
「ギランに攻め込んでるのは御座なりの兵力だ、
 陽動・・・だと思うな。何かあるだろう。」
トワークが従者に声をかけた。
しばらくしてフードルとヴィルゲイン、リステムが部屋に入ってきた。
「お前達の連携は中々の物だった、3人で行って欲しい所がある。」
「俺一人でもいいぜ、ギランに援軍を送るんだろ?
 俺が全部ぶち倒してやる!」
トワークは苦笑いしながら答えた。
「行き先はギランじゃない。あとで使いの者に便箋を持たせる。
 明日は早いぞ?準備を整えて眠ることだ。」
ヴィルゲインは笑みだけ浮かべて部屋を後にした。リステム、フードルと続く。
「どこに行かせるつもりだ?」
「大玉、お前の考えは正しい。ギランの軍は目眩ましだ。
 恐らく本隊はウィンダウッドに向かっている。」
「なるほど、先にWWに援軍を送るんだね。でも3人でいいの?」
「ぱや、お前は何事も真っ直ぐに捕らえるな。」
「違うの?」
「あいつらの行き先はアデンだ。」
「どういう事だ?トワーク。」
「大玉、お前の枷をひとつ外してやる。」
そう言ってトワークは部屋を後にした。
 

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